会社を退職して失業状態になったとき、ある一定の条件を満たしていると、雇用保険から「失業給付」をもらうことが出来ます。正式には求職者給付の「基本手当」といいますが、一般的には「失業手当」「失業給付金」「失業保険」などと呼ばれています。
給付を受けるための条件や手続きの流れを把握しておきましょう。
1.失業給付金をもらうための条件
失業給付金を受給するためには、そもそも退職前に雇用保険に加入していた実績がなければなりません。
雇用保険の加入条件は、雇用契約期間が31日以上あり、1週の所定労働時間が20時間以上であることが必要です。会社自体が雇用保険の適用を受けていることが前提となります。従業員を1人でも雇っている全ての会社は、法律上、雇用保険の適用事業所になることになっています。
条件①.離職の日以前2年間のうち、雇用保険の加入期間が12ヶ月以上あること
賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を、雇用保険の加入期間1ヶ月とします。
ただし、「特定受給資格者」や「特定理由離職者」は、離職の日以前1年間に、雇用保険の加入期間(賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月)が通算して6ヶ月以上あればOKです。
「特定受給資格者」・・離職理由が倒産や解雇などにより、再就職の準備をする時間的余裕もなく、離職を余儀なくされた受給資格者
「特定理由離職者」・・特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した者
これらの事由に該当するか否かは、あくまでもハローワーク側の行政判断によることになります。
条件②失業の状態にあり、ハローワークに求職の申込みをすること
失業給付金は、「失業」の認定をもらって初めて受給できます。ここでいう「失業」とは、離職した方が、「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にある」ことをいいます。ただ単に仕事をしていない人は失業とは認定されません。
働く意思と能力がありながら失業状態であることを証明するために、ハローワークで渡される「求職申込書」に記入をし、提出します。
2.失業給付金をもらうまでの基本的な手続きの流れ
①会社から「離職票」をもらう
②失業給付金の受給に必要な書類を揃える
③ハローワークへ行き「離職票」と「求職申込書」を提出(受給資格決定日)
④7日間の待機期間
⑤「雇用保険受給説明会」に出席(待機期間満了10日前後)
⑥第1回「失業認定日」に認定を受ける(受給資格決定日より4週間後)
⑦「失業給付金」の振込(認定を行った日から通常5営業日)
⑧以後、4週間間隔の「失業認定日」に認定を受ける
⑨失業給付金」の振込(認定を行った日から通常5営業日)
なお、自己都合退職等により、給付制限がある場合は、待機期間7日間の翌日から3ヶ月間が給付制限期間となるので、第1回失業認定日以降は給付制限期間が終わったところで第2回の失業認定日になります。
3.失業給付金をもらうための手続きに必要な書類
①離職票1.2
②個人番号確認書類(いずれか1種類)
・マイナンバーカード
・通知カード
・個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
③身元(実在)確認書類((1)のいずれか1種類。持っていない場合は(2)のうち異なる2種類(コピー不可))
(1)運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
(2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
④写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
⑤印鑑(認印可。シャチハタなどのスタンプ印は不可)
⑥本人名義の預金通帳又はキャッシュカード
4.失業給付金の支給額
失業給付金は、離職票に記載された賃金額をもとに算定されます。原則として、退職直前の6ヶ月の賃金総額を180日で割って1日あたりの「賃金日額」を出します。
賃金総額にはボーナスなどの臨時的に支給されるものは含まれませんが、通常月に支給されるものは全て含まれます。通勤手当も含まれます。
「賃金日額」には、退職時の年齢に応じて上限額と下限額があり、失業中の生活保障として低すぎず高すぎずにならないよう配慮されています。
この「賃金日額」に一定(45〜80%)の給付率を掛けて算出されたものが「基本手当」といい、失業給付金の日額になります。賃金の低い方ほど高い率となっています。
基本手当にも年齢ごとの上限額と下限額が決められており、毎年8月に見直しが行われることになっています。平成29年8月1日現在は以下のようになっています。
30歳未満 6,710円
30歳以上45歳未満 7,455円
45歳以上60歳未満 8,205円
60歳以上65歳未満 7,042円
5.失業給付金の受給期間と給付制限
失業給付金は原則として、離職日の翌日から起算して1年間が受給できる期間です。給付制限により給付日数分の失業給付金がもらいきれなくなる場合もあるので、早めにハローワークで手続きをしましょう。
ハローワークで失業給付金の手続きをしても受給資格決定の日から7日間の待機期間が過ぎなければ受給することが出来ません。さらに待機期間を過ぎても失業給付金を受給できない場合があり、これを「給付制限」といいます。3通りのケースがあります。
①退職理由による制限
自己都合退職や自己の重大な責任による解雇(重責解雇)の場合には、3ヶ月の給付期限があります。
②職業紹介を拒んだ場合の制限
ハローワークが紹介する職業や指示された職業訓練を受けることを正当な理由無く拒んだ場合、拒んだ日から1ヶ月の給付制限を受けることになります。
③不正受給した場合の制限
不正受給が発覚した場合は、以後全ての給付は行われず、受給した分も変換しなければなりません。
6.失業給付金の給付日数
退職理由、被保険者期間、退職時の年齢によって給付日数は変わってきます。
再就職が決まるまでの間、給付日数を上限として失業給付金の支給を受けることが出来ます。
<一般の自己都合退職者、定年退職者の場合>
被保険者期間 10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日
7.失業給付金受給中に再就職が決まったら「再就職手当」
失業給付金が支給されている期間に再就職先が決まったら、失業給付金は打ち切られますが、下記全ての条件を満たせば「再就職手当」の支給を受けることが出来ます。
①受給手続き後、7日間の待機期間満了後に就職、又は事業を開始したこと。
②就職日の前日までの失業認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
③離職した前の事業所に再び就職したものでないこと。また、離職した前の事業所と資本・賃金・人事・取引面で密接な関わり合いがない事業所に就職したこと。
④受給資格に係る離職理由により給付制限(基本手当が支給されない期間)がある方は、求職申込みをしてから、待機満了後1ヶ月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業書の紹介によって就職したものであること。
⑤1年を超えて勤務することが確実であること。
(生命保険会社の外務員や損害保険会社の代理店研修生のように、1年以下の雇用期間を定め雇用契約の更新にあたって一定の目標達成が条件付けられている場合、または派遣就業で雇用期間が定められ、雇用契約の更新が見込まれない場合にはこの要件に該当しません。)
⑥原則として、雇用保険の被保険者になっていること。
⑦過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと。
(事業開始に係る再就職手当も含みます。)
⑧受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと。
8,「再就職手当」の支給額
所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合に、支給残日数の60%、所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合に、支給残日数の70%を基本手当日額に乗じて得た額(1円未満の端数は切り捨て)が支給されます。